webディレクターマニュアル 必要なスキル・ノウハウ

Web業界10年目のWebディレクターのまとめ。必要なスキルや仕事に役立つノウハウやサービス分析など。

Webディレクターとは?仕事内容や必要なスキル・資格について

Web業界の仕事について調べると、必ず「Webディレクター」という仕事が目につくと思います。

 

ただ、Webディレクターの役割は会社によって違っているので、必要なスキルも同様に変わってきます。

 

私はずっとインハウスでのWebディレクターをやっているので、そちらの経験から仕事内容や必要なスキルを書いていきたいと思います。

 

※インハウス=自分の会社にディレクター、デザイナー、エンジニアなどを持つ形態。制作会社へ外注することは基本的にはありません。

 

Webディレクターとは?

「ディレクター」と聞いてもピンとこない人も多いと思いますが、プロジェクトにおいて、「監督」「指揮」「管理」などの仕事を行う人を指します。

 

Webサイトなどを作る際には、Webデザイナーやエンジニアなど様々な人と一緒に仕事を進めていくことになりますが、全体の進行を管理したり、クオリティについて責任を持ち、プロジェクトを成功に導くリーダーのような立場になります。

 

Webディレクターの役割とは?

インハウスと制作会社でWebディレクターの役割も変わってくると冒頭に書きましたが、インハウスの会社でも、役割は違っていると思います。

(私は2社経験していますが、2社でもかなり違っています。)

 

Webディレクターの仕事は多岐に渡るため、やるやらないの役割が会社によってかなり違う気はしますが、大きく違う点は、Webディレクターが「企画」も担当するかどうかだと思います。

 

「企画」も担当する場合、自分で立案した企画をそのまま進行管理しますが、分業(企画者とWebディレクターが別)の場合、企画者が企画した案件をWebディレクターが巻き取り進めていくことになります。

 

「何でも屋」のように多岐の仕事をこなすWebディレクターですが、「企画」も行う場合、サイト制作を行う場合、ざっくり以下のような仕事を行います。

 

【サイト制作の流れ、仕事と担当】

(1)サービス企画 / 企画 or Webディレクター

 どういうサービスを作るのか

 市場調査、ニーズ調査

 事業計画策定

 (どういうビジネスモデルで、どのようにサービスを伸ばしていくか。

  その場合の収支はどのようになるか。いつ単月黒字するか、累損解消するか。)

 法的にグレーな点があれば、法務・外部弁護士含めスキーム検討

 社内調整

 (財務経理、カスタマーサポート、セキュリティ、インフラ など)

(2)社内承認(上司や経営層への提案) / 企画 or Webディレクター

(3)仕様書の作成 / 企画 or Webディレクター

(4)Webデザイナー、エンジニアへの依頼 / Webディレクター

(5)進捗管理、クオリティ管理 / Webディレクター

(6)開発物のテスト / 全員

(7)リリース / 全員

(8)アクセス解析、課題発見、改善案作成、修正リリース の繰り返し / 企画 or Webディレクター

 

ここに書いたのは大きなタスクだけなので細い仕事はもっとたくさんありますが、色々な役割を担っているのがWebディレクターなんだなとイメージしてもらえると良いと思います。

 

Webディレクターに必要なスキル、資格は?

上記で書いた通り色々な仕事・役割があるWebディレクターですが、それに伴い必要なスキルをまとめてみました。

 

最初から全てが出来る必要はないですが、Webディレクターとしてステップアップしていくために、出来る範囲を広く深くしていきましょう。

 

※なお項目が13個と長くなりましたが、サイト制作をゼロから行う際に、必要になるスキルを順番にあげました。ディレクターとして初めてに行う業務では、一部スキルだけで問題ないですが、最終的にはこれくらい多岐な内容を把握した方が良いのだな、というイメージを持ってもらえると嬉しいです。

※それぞれ、概要のみで詳細はまた別途かきたいと思います。

 

(1)ヒューマンスキル

最初に上げるスキルがコレ?と思われるかもしれませんが、個人的に一番大事なスキルはヒューマルスキルだと考えています。

 

極論を言うと、他のスキルが最初なくても、ヒューマンスキルが飛び抜けてあれば大体何とかなるかなと思います。(「企画」を自分で立てる、などはどうにもなりませんが)

 

というのも、基本的にWebディレクターはプロジェクトを遂行するために、各部門のプロフェッショナルの人達と動くことになるので、プロジェクトの目的を皆に正しく伝えられて、助けてもらえるような人間力があれば、大体何とかなるからです。

 

また、他のスキルを身につけているとしても、結局プロジェクトの成否を決める際に大事になってくるのがヒューマルスキルだと思います。

 

ありがちなのが、Webディレクターが「一番偉い」ような気持ちになってしまい、各部門への依頼や調整が横柄になってしまっていたりする人。

ディレクションというのはリーダーのような仕事、と書きましたが、偉いというわけではなく、全体の中での立ち位置の一つです。ここを勘違いすると、各部門メンバーのモチベーションが上がらないですし、何か問題があった際にも「連絡したくない」という気持ちが連携が遅くなり、スケジュールの遅れや、大きな問題を生むことがあります。

 

各メンバーが最大のモチベーションを発揮できるように、面倒な調整などは自分で片付け、仕事を依頼できる人が優秀なWebディレクターかなと思います。

なので、他スキルと合わせて、常に頼りたくなるようなヒューマンスキルを磨きましょう。

 

(2)インターネットビジネス知識

現在あるインターネット上のビジネスが、どのようなサービスを提供しており、どこから収益を得ているのか把握しているのか理解しているかが、今後のビジネス検討する上で必要になってきます。

また、理解を深めるために、同業種の中で似たサービスが複数あると思いますが、それぞれがどのような差別化を図り生き残っているのか考えてみるのもスキルアップに繋がると思います。

 

ビジネスモデルの他にも、インターネット技術の発展に伴い、新しい情報がどんどん流れてくる時代ですので、アンテナを高く感度が高い状態をキープしておくように意識しましょう。

 

(3)情報収集、課題発見スキル

常に新しい情報や技術が流れてくる時代ですので、様々な情報を常にインプットし、「何か不便なことはないか?」という視点で考えられる癖をつけましょう。

 

誰でも「新しい!」と思えるような発見は難しく、誰かが既に取り組んでいることが多いかと思います。

リアルな声を深く地道に集めて、隠れたニーズを発見していけるようにアンテナを高く張るように意識しましょう。 

 

(4)企画力(法務関連知識、財務経理知識含む)

課題・ニーズを発見した後、「実現に移す」ことが企画の力が試されるところになります。法的観点、財務経理の観点など踏まえ実現するためのビジネススキームを検討し、社内各所の調整・承認を受け、いち早くアウトプットするまでの力をまとめて企画力と言えるのだと思います。

 

特に新規事業になるほど、法的に問題ないか、社内の財務経理処理として問題ないか、などの調整検討が必要になってきます。

その際、知識がゼロからの状態から始めると、そこの調整に数か月の時間がかかってしまうこともあります。

 

ですので、アイデアを作る企画力とともに、実現するために必要な関連知識は常に学んでいくと良いと思います。

 

(5)Webマーケティングの知識・運用スキル

企画を立案した後に大事になってくるのが、そのサービスを、「どうやって伸ばしていく?」という点になります。企画の承認を社内経営層から取るためには、事業開始からの「単月黒字」「累損解消」がいつになるのか、事業計画を立てる必要があります。

 

この計画を立てるために、必要になるのでWebマーケティングの知識になります。

スティング等の有料プロモーション、SEOによる自然流入増加など、どのような内容でいくらかければ、どれくらいのトラフィックが見込めるか。また、トラフィックの増加に伴い、どれようにマネタイズが図れるのかなど、を数値ベースに落としこむ力が必要になります。

 

また、基本的には新記事業で予算が潤沢なんて会社はほぼないので、お金をかけずにどのようにユーザーを伸ばすかという施策・アイデアが必要になってきます。

事業の成否に一番大事な力と言っても過言でない点ですので、常に意識して伸ばしていきたいスキルです。

 

(6)ドキュメント作成スキル

社内の承認を得るためにも、開発物を正しく効率的にデザイナー・エンジニアさんに作ってもらうためにも、分かりやすく心に響くドキュメンテーション作成能力は必須になってきます。

 

プレゼン資料や仕様書では、作り方やコツは違ってくるので、違いを理解しつつ良いドキュメントが作成できるようになりましょう。

 

(7)コミュニケーション、プレゼンテーションスキル

社内の承認を勝ち取るためのプレゼンテーション能力、各部署の協力をいただいたり開発時のやり取りを円滑にコミュニケーションスキルは、Webディレクターに必須なものです。

 

それぞれ必要なスキルはまた別途まとめたいと思いますが、体系的なプレゼン手法などが上手くまとめられたノウハウ本などありますので、日々勉強をしていきましょう。

 

(8)編集・ライティングスキル

実際に記事を書けるほどのライティングスキルはなかなか身に付かないですが、自分の事業がどのようなものか、作りたいモノをどういうものか、分かりやすく説明できる編集スキルは必須です。

 

文章を書くのは私も一番苦手なのですが、少しずつ慣れていくものと思いますので、アウトプットを多く意識し、スキル向上を図っていきましょう。

 

(9)Web制作知識(インフラ知識、Webデザイン知識、プログラム知識 など)

Webディレクターが実際にモノを作る役割まで担うことは多くありませんが、良いものを作るためにはそれぞれの知識を深く持つことが大事になってきます。

 

「何ができるか」を知ることで企画の幅が広がりますが、「どれくらい時間がかかるか、大変か」を知ることでスケジュール管理の失敗が少なくなり、効率も良くなります。

また、私は元々Webデザイナーだったのですが、作る内容を話す際にも、何も分からない状態の人と話すと「どこか話があっていない」気がしてドキドキする場面もありました。重大な場面で認識違いがあると最悪リリース直前での仕様変更などに繋がってしまい全員が疲弊することになります。

 

メンバーの橋渡しをする存在であるWebディレクターは、「実際にプロレベルで作れず」とも、「どのように作るのか」理解できていると良いと思います。

 

(10)スケジュール、予算管理スキル

スケジュールを管理し、当初の予定通りにリリースを行うことはWebディレクターに重要なスキルになります。

 

スケジュール通りリリースするために、「開発前」「開発途中」それぞれ意識する点があるので特に必要と思う点をまとめておきます。

 

開発前・・・

上からの要望や、現場で作りたいものの要件をまとめ、「やること」「やらないこと」を明確にしておくことが重要になります。あたり前のことのようですが「やらないこと」を明確にしておくことが非常に重要になります。

 

上司や経営陣に作るものを話す際に、細かい点まで説明する時間はなくため、「こういうものを作ります」とコンセプトや大きな差別化ポイントのみを理解してもらっている状態が多いです。

そのため、開発途中や終盤に差し掛かった時に、「こういう機能はないの?」のようなごく真っ当な指摘が来ることがあります。もちろん現場としても作りたいのはヤマヤマですが、初期にスピード感を持ってスモールスタートをする時や、予算がない時には、必須機能に絞って開発していたりするので、途中でその認識合わせをすると、お互いアンハッピーになることがあります。

こういった事態を避けるためにも、「やらないこと」を含め、開発前から認識を合わせておくことが非常に重要になります。

 

開発途中・・・

開発前には、仕様書からデザイナー・エンジニアの方々に「工数見積もり」をとってから動き出しますが、仕様書から抜けてしまっていた内容や、動いているものを見るとこっちが良いと変更になる点は多く出てきます。

仕様の抜けは企画側で時間をかけて少なくする、ということで多少軽減できますが、動いているものを見ての変更はなかなか軽減しにくい部分です。(もちろんモックなどを詳細に作って、手戻りをなるべく少なくする、は必要ですがどうしても触らないと分からない部分は多いです。)

 

こういう変更点が出てくる中で、スケジュール通りにするには、「エンジニアさんが残業して頑張る」ということも多くなってしまうのが現実ですが、できるだけWebディレクター側でも吸収してあげるために、当初の段階で工数・スケジュールにバッファを持って上を調整しておくことも大事なのかと思っています。

 

スケジュールをギリギリにしておいて、なお追加作業全てをエンジニアさんの頑張りでどうにかする、を「やらなければいけない時」もあるとは思いますが、負担を少なくするためにWebディレクターとして上と戦う(調整)部分も必要なスキルかと思います。

 

このへんはまた別途詳細書いていきたいなと思います。

 

(11)マネジメントスキル

案件のリーダーとして、プロジェクトメンバーが最大限の力を発揮できるような環境を作ることがWebディレクターに必要なスキルです。

マネジメントのやり方としては人によって様々なタイプがあると思いますが、最近の私は「基本的にはメンバーの自主性に任せて動きやすい環境を作るように尽力」することを念頭に置いています。

ただ、「ゆるい」だけの状態は良くないため、クオリティ管理のために時には厳しい視点で指摘をすることも多いです。「モノ」に対する部分は妥協しない姿勢だけは崩さないようにしていますが、人や組織によって最適な形は色々あると思います。

(昔はもっと普段から細かい点を言ううるさいタイプでしたが、自分に合っていない気もして徐々に変わってきています)

 

経験をしつつ、最適な形を作っていけるようスキルを伸ばしていきましょう。

 

(12)アクセス解析スキル、論理的思考

リリース後、正しく状況を把握するためのアクセス解析スキルは重要です。

サイトによって、GoogleAnalyticsやSiteCatalyst を使っている会社が多いですが、使いこなした上で、様々な視点からアクセス解析ができるスキルを身につけましょう。

 

アクセス解析は奥が深く、単純に数値が取得できるだけでなく、「こういう数値が取れれば、こういうことが言えるよね」という提案に繋げられるようになることが必要です。

 

今度実例についても書いていきたいと思いますが、数字からの提案力は日々伸ばしていきましょう。

 

(13)サイト改善(PDCA)スキル

前項のアクセス解析スキルから、様々な改善案を出し、サイト改善を回していけるスキルはインハウスでのWebディレクターには必須のスキルです。

Webサイトはリリース後、ユーザーのニーズや使い方を知り、どんどん伸ばしていくことが必要であり、Webの醍醐味です。重要なページは1つの改善施策で10%以上効果(売り上げ)が伸びることもあります。

 

今後、ノウハウは詳細まとめていきたいと思いますので、ご期待ください。

 

 【Webディレクターに資格っているの?】

 スキルの話が長くなったため、資格の話はサクッとだけ書きます。

 

結論からいうと、特に資格は不要です。

私は業界でそろそろ10年目 ですが、1つも資格は持っていません。

(大手企業でそこそこな立場ですが、特に資格が必要と思ったことはないので、特に必要になることはないと思って大丈夫だと思います。) 

 

もちろん資格をとろうと試験を受ければ、受かる自信もありますが、資格を取るよりも、その内容を実践で使えるのかが大事になってきますので、資格の内容は座学と思って理解しつつ実践経験を積んでいきましょう。

 

※ちなみにWebディレクターの資格であれば、ウェブケンの以下などがあります。(参考までに) 

Webディレクション | Web検定(ウェブケン)

 

最後に

ダラダラと書いてしまいましたが、Webディレクターの仕事についてイメージがわきましたでしょうか。これから検討されてる方に少しでも参考になれば幸いです。

 

本当は「年収」や「転職・求人」あたりのことも書く予定でしたが、長くなってしまいましたので、また別で書きたいと思います。

 

欲しい情報などあれば、リクエストももらえるとやる気がでますのでお待ちしてます。